改組 新 第2回(平成27年度)日展

日展×文学
~日本の美と若手作家のコラボレーション~

彫刻×文月悠光

【インスピレーションを受けた作品】

「平和への祈り」山本眞輔 改組 新 第2回日展

わたしの祈りかた

文月 悠光

わたしが止まって見えるのは
世界が動きすぎている証です。

「救ってください」
誰かに手を伸べようとするが、
祈りかたを教わらなかった。
「救う」とは、どういうことか。
手のひらそのものに問いかけてしまう。
この手をすり抜け、こぼれ落ちるもの、
この手でしか掬い取れないものを知る。
両の手のひらに乗るものが
ちっぽけなわたしの、すべて。

今、わたしの手から地上を生もう。
手のひらに地熱を感じてみたいのだ。
わたしの背後に育っていくものを
あなたは指さし、告げてください。
それは赤い屋根。
それは銀杏の木。
それは流れゆく雲――。
ここに時が流れはじめる。

あなたも祈りのために振り向いて、
肩に背負ったものを唱えてごらん。
それは眩しい街。
それは疾走する車輪。
それは燃え立つ夕暮れ。
土は煙り、波は寄せ、
風は絶え間なく吹き込んでくる。
世界はいつだって晒されている。

あなたの足元に
消えない影としてわたしは立つ。
あなたもわたしも世界をまとう。
祈りかたは初めから
肉体にそなわっていた。
まずは一歩一歩、
しなやかな土踏まずで
この惑星をひそかにいだく。

プロフィール

文月悠光(ふづき ゆみ)1991年生まれ
詩人。北海道生まれ、東京在住。高校3年の時に出した第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少受賞。近著に詩集『屋根よりも深々と』。NHK全国学校音楽コンクール課題曲の作詞、「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」での詩の朗読など広く活動中。ポプラ社のウェブサイト「WEB asta*」にてエッセイ<洗礼ダイアリー>を連載中。