第1科 日本画(平成23年10月20日発表)
| 題名 | 作者名 | 授賞理由 |
|---|---|---|
| ゆくえ | 青木秀明 | コンドルの持つ精悍さ、力強さが画面に表出され重厚な色相と作者の個性と相まって緊張感のある作品になっていると思います。 |
| 風薫る | 久米伴香 | ここ数年来今回出品の様なテーマで優作を発表して来た。特選受賞作は、白い美しい淡緑色の階調で白い風の流れる雰囲気を見事にだした力作です。自然の息吹を静かな深い心の目で捉えて臨場感を表現している。 |
| 秋の野想曲 | 佐藤朱希 | 野の草花が咲きほこる中で、人物が佇んでいます。銀色の世界の中で、野の草花、自然と一体となって歌を奏でている幻想的な世界です。作者は自然と人物とが一体となった世界に長年の間取り組んでおり、とても好感のもてる作品です。 |
| 沼 | 橋本正弘 | 今年はモチーフを自然描写に移して季節の移ろい、ぬくもりのようなものに挑戦しています。ベテランですが年令を感じさせない力強さと若々しさ、そして詩情に流されず、絵画的な構成も魅力でした。 |
| 粛粛 | 畑中那智子 | 画面から受ける空の白と雑木林、叢の黒の表現が力強く、作家の目がそれぞれの植物を注意深くより細かく見ている事が作品から伝わってきます。日本画の材料である金泥、墨、岩絵具を使った見応えのある作品だと思います。 |
| 異邦人 | 羽溪了 | 世界中閉塞感漂う今日此の頃、老人が夕暮れの教会をバックにワイングラスを持ち、何か言いたげな表情が良く描けている作品である。 |
| 浜 | 福原匠一 | 山陰の寒村の浜の情景を、しっかり腰をすえてとらえている。 寂寥とした空気と、浜に揚った船の描写も適確で永年の研鑽の賜だと思う。 |
| 登校指導 | 松永敏 | 新人の先生なのであろう。登校指導という画題の印象も初々しく伝わって来る。方形の画面に考えぬかれたであろう傘の黒い形と量がみごとである。学生服のかすかなリズムと共に、ホルダーのわずかな緑も心地よい。 |
| 高架 | 山内登喜雄 | 目の前に出現した大きな建造物に対し力強さと畏怖の念をいだき制作に取組み、強さと建ちゆく構造の美しさ、黒々とした逆光の中に美を創造した感性は特筆すべきものがあった。大いなる賞賛を送りたいと思います。 |
| 黒潮に立つ | 山田毅 | 「黒潮に立つ」という画題から想うに太平洋に突き出したどこかの灯台であろうか。作者は以前より漁網をテーマに漁村の情景を描いてきた。今回は灯台を主題に新たな境地を探そうと苦悩した力作であったと思います。 |
第2科 洋画(平成23年10月16日発表)
| 題名 | 作者名 | 授賞理由 |
|---|---|---|
| 薫る | 相本英子 | ここ数年、室内風景をテーマとして発表しているが、今回の作品はしっかりとした画面構成により、暗い室内に白いカサブランカを描くことにより、女性作家らしく、清楚さがよく表現された点が評価された。 |
| 光差す時間 | 池上わかな | 郷里のベンガラ工場跡に座す自分を描いたものである。風化したコンクリート壁の色と服の色がノスタルジックに語りかけ、差し出された手のひらには、幸せを願う青い鳥がしのび寄る。象徴的な作品となり秀作。 |
| チョーク絵のある静物 | 小野大輔 | 長崎で活躍する26才の新鋭。 「チョーク画」という新しい技法を武器に臨んだ作品である。ジャンルとしては、静物画になるが、背景に人物を配するという難しい課題を若い感性で見事に融合させた秀作である。 |
| 獺祭図 | 久保博孝 | テーマに合ったものを少しずつ集め、丹念に観察し、彼独自のスッキリとした空間とものの存在を感じさせる作品である。 |
| アトリエ・物語 | 曽 剣雄 | 日展らしい奥行きの深いフィールドでの描き手として力を発揮している。的確な描写力に裏打ちされている表現は説得力を持つ。 二度目の特選受賞者として、さらなる発展を期待する。 |
| 白き朝 | 錦織重治 | 自然をテーマとした風景を手掛け、主に長野県の山々をモチーフとし、特に北アルプスの雪山を多く得意としている。今回の作品も上高地の水辺と厳しい山の姿が見事に表現されている。 |
| アルテミス | 西田陽二 | 北海道育ち、雪の白さの中で培われた作品。長年にわたり白い世界を追求し続け、今回の作品に結実した。卓越したデッサン力と構成力には目を見張るものがある。今後さらに大きな飛躍が期待出来る。 |
| 小休止(パイプの煙) | 堀 研一 | 人形にレインコート、砂時計等、使い古された愛着のある物ばかりをアトリエの一隅に配置し、くり返し見て描くことにより深味のある表現になっている。今回一段と完成度の高さが見られ、今後の展開が楽しみ。 |
| 雄流 | 吉田伊佐 | 現代のリアリズムを問う作品である。作者はあえて、現実と映像の「はざま」を追求している。ここで表現された空間は、堅牢であり、手で触れることのできる不思議な被膜となっている。写真を超えるリアリズムとして秀逸である。 |
| 凛と | 渡邊裕公 | 椅子に座った身近な女性を作者の暖かな眼差しで見つめている。作品は的確な描写力で表現され、また、ボールペンを使用した彼独特の雰囲気がみごとに醸しだされた秀作となっている。 |
第3科 彫刻(平成23年10月20日発表)
| 題名 | 作者名 | 授賞理由 |
|---|---|---|
| 黒潮'11 | 阿部 鉄太郎 | 三角形のがっちりとした構造を内に秘めた動勢と緊張感のあるモデリングにより、作者の内なる思いと、土佐という土地がらのもっている逞しさを力強く表現している。充実感のある優作である。 |
| 心のひかり | 小瀧 勝平 | 静かな抑制されたポーズは精神性の高さを感じる。単純化した構成による造形で、側面の伸びやかな流れは自然である。作者の受けた災害の大きな失望の中での制作と聞いたが、僅かな光りを見い出したのであろうか。 |
| お喋りな菫 | 紺谷 武 | 非常に斬新な感覚で椅子と女性像を構成している。女性像の量をおさえることで椅子とのバランスがとれ不思議な空間を醸しだしている。また、机を省くことで、説明的になることを避け内面性を強調している。 |
| 大河を前に | 白石 骰K | 静謐な男性像である。堅固な構造性を持ち、モデリングには無駄がない。いかにも、思索的な精神性の高さを表現しようとした作者の思いが直截に伝わる一作である。 |
| 光 | 土居 忠雄 | 伸びやかなポーズで、清爽な現代女性を彫刻した作品である。着衣表現に卓越した技術が伺える。観る人に心地よさを与える木目の優しさ美しさと、リズミカルなノミ跡に作者のこだわりを感じる。 |
| 束 | コ安 和博 | 特選の中でも出色の作品である。豊かで堂々としており、人体具象彫刻の最も大切な、充実した量感表現と、デッサン力がある。作者の精神の格調高い緊張を表現している。 |
| 風 | 東 誠 | 細身の男性像でありながら、芯の通った構造性と強さがあり、彫刻性の豊かさを感じる。 左手で風を感じ、肩を通って右手に伝わる流れは、草原にゆるやかに吹く風を連想し、風の動きを見事に表わしている。 |
| 時の果実-海- | 廣川 政和 | 受け継がれる命、その繰り返しの中、常に変わらない子を思う親の心をテーマに制作されたこの作品は、爽やかで詩情豊かに表現され自然体でほのぼのとした彫刻である。彫刻的にも母子一体としての量を感じる。更なるステップアップを望む。 |
| 道標の男 | 前芝 武史 | 人間が持つ複雑な感情を、迷いなのか、思索なのか、覚悟なのか、鋭い眼光は、未来を目指し力強く歩み出そうとする男性像として堅実なデッサン力と荒々しいタッチの肉付けでより一層そのテーマを印象づけている。 |
| 復活 | 南川 憲生 | 独特の造形感覚で創出された作品と云える。体躯を方々の角度には幾何学的な面で処理し、特に頭部は細い三角錐を思わせる程にデフォルメされ、胸部や膝における直線的なカット等、優しい女性像とは云え力強い印象を与える作品である。 |
第4科 工芸美術(平成23年10月16日発表)
| 題名 | 作者名 | 授賞理由 |
|---|---|---|
| 悠久 | 安藤 工 | 手びねりで造形し、鋭い刃物を使い、細かなマチエールを作った。後に鉄釉で本焼成し、その後上絵にて、雅の世界を想い、悠久の世界を表現した秀作である。 |
| 羽化’11-III | 久保満義 | 人体の持つ柔らかなフォルムに感銘を受けた作者は、古薩摩の釉と胎土を現代の感覚でアレンジし独特なマチエールと抽象的造形で、その感動を表現しようとしている。 |
| 守護神 | 高岡由美子 | エジプトで死後の世界を司るという守護神に復活と再生への願いを託して、白い一枚革が形造る革特有のしなやかな凹面と凸面の陰影を効果に用い、タテヨコに配された金銀箔による構成が印象的な秀作である。 |
| 虹と海と・・・ | 名光夫 | 大海を泳ぐ魚の群れを錫板を貼り重ねて研ぎ出し、蒔絵を併用して画面構成をする。青貝の光と色漆の表現は、虹色に輝き、これから来るであろう未来への夢と生命感あふれる世界観そのものである。 |
| 北西の宙から | 谷野吉冬 | たまたま日本の上空を巨光を放ちながら通過するスペースシャトル・ディスカバリーを目にした瞬間の感動を自己の心象も交えて表現した作品で、鮮やかな色彩も美しく、作者の感動が伝わってくるようです。 |
| 想生 | 中村三喜雄 | 真鍮という堅牢な素材を使い、種子を思わせるゆったりとしたフォルムを作り出し成形の困難な材質を敢て用いながら、自然や生命に対する暖かな共感を伝えている。 |
| 廻・こしゆくもの | 向山伊保江 | 過去から未来へと時をこえ生きゆくものは、世代を繋ぎ連って行く様を宙宇的楕円で表し、「生存の形」を幾種の直線で表現する。銅板を打ち出し、七宝釉・金箔を焼成、銅板をエッチング・真鍮等の金属を使用した。 |
| 風吹く渚 | 森田清照 | 巻き貝が自然界の波・光・砂などに洗われ芯だけとなる。この形に美の根源を探り、乾漆技法にて造形をする。漆を塗り重ね朱と黒の乾漆粉にて蒔き仕上げられた作品は、豊かな詩情と品格を秘めた優品である。 |
| スローモーション | 山元健司 | 上下に羽ばたく鳥、浮上しているのか降下しているのかわからない。その姿態をスローモーションとして受け止め、高度な技術によって表現された縦宇宙は、現代社会への強烈なメッセージでもある。 |
| 庭の時間 | 行吉志津枝 | 窓際に佇み静かに庭を眺めるという日常的な姿を絵画的に染色技法により表現した。 大きな構図取り、抽象的、直線を多く用いているがソフトな空間、ブルーを基調に白との美しい対比、すがすがしい秀作である。 |
第5科 書(平成23年10月15日発表)
| 題名 | 作者名 | 授賞理由 |
|---|---|---|
| 秋意 | 伊藤仙游 | 清代の王鐸を基盤に、文字の大小の変化が流れの中にリズミカルに表現され、懐の広い字の姿は効果的である。 明快に響く線状は紙背に徹するかのごとき表現で、印象に残る。中央部「楊柳、籬」などの造形美はことに魅力的である。 |
| 轍 | 岩田海道 | 錬磨された線は強靭さと柔和さを調和させ、洗練された潤渇の素晴らしさは疎密のバランスと余白の美しさを生み出している。スケールの大きい堂々とした作品は作家の人間性が表現された傑作である。 |
| 呉蘭雪詩 | 梶山夏舟 | 全体の文字造形を右傾斜に構え、明清風の古意を基調に、書き出し、中央、後半の含墨が効果的。文字の大小変化、上下リズムが美しく、充分な余白、重厚な線条の響きが心に迫る。 |
| 古都のうた | 上林三玲 | 會津八一の歌を、色紙14枚に流暢に散らし書きした快作。雅趣豊かな筆致が起伏をともないながら流動するように自在で、心象の変化を美しく紙面に多様に定着させた。古筆のもつ妙味を現代に敷衍させた韻致の高い書。 |
| 秋の山 | 柴原月穂 | 厳しい筆線が、絶妙な間合いで快調に展開する運筆は実に興趣が深い。また、白を生かす空間処理と墨法の立体的表現には心境の高い透徹した書美の世界が広がっていて、仮名書美の伝統を遺憾なく発揮した。 |
| 萬葉歌 | 新谷泰鵬 | 和様の書を基盤に柔かくおだやかな気分を訴えかけた秀作である。横物の作品型式にふさわしい美しい流れは様々な変化を見せ、確かな骨格と運腕が、余白の美しさを一層引き立てている。 |
| 瀧の白糸 | 野田正行 | 歌一首を大胆かつ多彩に表現したスケールの大きい意欲作。悠然とした構えと形態、静から動、動から静へと展開する変幻自在な運筆の妙味は秀逸。また、意表をつくような立体的墨法も斬新で仮名書美に新生面を開いた。 |
| 韜光養徳 | 柳 濤雪 | 受賞作は巧を前面に見せず、奇を衒わず、虚飾を排しての堂々の作品である。 積み重ねてきた木印の技法は更に円熟度を増し、切れを抑えての刀法は渋味を醸し出し、その存在は他を圧倒している。 |
| 鳴鶴論書 | 山際雲峰 | よく見かける完成された初唐の楷書とは異なり、楷書揺籃期の生命力豊かな北魏の楷書をよりどころとして、鍛え上げた確かなデッサン力でまとめた、親しみやすさと安定感のある作品である。 |
| 嵐山の櫻 | 吉田成美 | スケール大きな三行書き。線に生気溢れ、繊細で緻密な線質を取り入れた箇所が実に絶妙で、人を惹きつける魅力がある。永年の古典の鍛錬や創作の蓄積の結果であろう。観る人の心を引く。 |



